この記事については、おおむね同意できるのだけれども、一点だけ気になるところがある。
アマニ油だ。
最近なんかアマニ油とかエゴマ(シソ)油が人気らしくて、スーパーの棚でも、そこんとこだけが空っぽだったりする。
ω-3脂肪酸(αリノレン酸の類)が多いからとか何とか。そいで、テレビで紹介されたりして、ドカッと売れて欠品したりするみたい。
ちなみに普段わたくしエゴマ(シソ)油を愛用している。そんで、アマニ油とエゴマ油はスーパーの同じ棚の同じ段にある訳で、どっちも欠品で困ったりする。
でもアマニ油って…本当に大丈夫?
というのも、アマニ油の食用としての実績に疑問符が付くからなのだ。
『亜麻色の髪の乙女』なんて歌があるけど、この「亜麻」ってのがアマニ油の元の植物。そもそも「亜」な麻であって、まず繊維としての利用がある。日本語でリンネルとかリネンとか言うけれども、これはフランス語の linière が元で、亜麻の繊維(の織物)の色を亜麻色と呼ぶのだ…現在では「生成り色」と言うほうが多いと思うけど、フランス語じゃbeige(ベージュ)ないし écru beige(生成りのベージュ)だそうな。
そしてアマニ油ってのは亜麻の種の油なのだけど、これはフラックスですよ。乾性油といって、アマニ油やエゴマ油は酸素と結びついて(酸化して)固くなる。この性質を利用して、塗料に使ったものなのだ。
日本の昔の雨傘は竹なんかを骨として、布じゃなくて紙を貼った訳だけれども、これでは防水にならない。だから貼った後でエゴマ油などの乾性油を塗って仕上げたものだ(仕上げに塗ったのは他にアブラギリの油、あるいは柿渋を使った)。
今でもドイツではアマニ油ベースの塗料が作られていて、それを日本に持って来て、家具の塗装に使う工房なんかがある。私が知ってるのは、家具や子ども向けの玩具類、ほか塗り箸など。完全に天然素材だし、ヨーロッパで古くから利用されてるし、化学物質過敏症とはほぼ無縁だからね。
ただ、それを食べるとなると話は別だ。
エゴマは朝鮮半島で食用としての実績が十分にある。李氏朝鮮時代でも宮廷料理に使われていたぐらいなので。
しかしヨーロッパでは、ドイツあたりの生産地で、日本のゴマみたいな利用があったぐらい。塗料としての実績はものすごく大きいけれども、それほど食用としての実績があるとは思えない。
アマニ、アマニ油@「健康食品」の素材情報データベース(国立健康・栄養研究所)
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail951lite.html
「危険情報」で、アナフィラキシー反応の症例がみられるとのこと。かなり微妙。
公平を期して:
シソ@「健康食品」の素材情報データベース(国立健康・栄養研究所)
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail169lite.html
エゴマはシソの変種なのでシソのくくりなのだが、エゴマ油に関しては腎不全の悪化を促進する可能性が指摘されているぐらい。動物には有害で、人間の場合、シソの葉でアレルギー性接触皮膚炎の症例がある。
そりゃω-3脂肪酸だのαリノレン酸だのが多くて健康に良いってのは、お説ごもっとも。
しかし、脂肪酸の組成比からして健康に良いからと言って、食用の実績に乏しいアマニ油を使うのは、かなり危ういと思う。
だから私はエゴマ油を使うのだ。