KFCのスパイス

【完成】ケンタッキフライドチキン完全再現への道~後編~

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 よぉやるよ、としか言えない。

 

 にしてもスパイスのブレンドは謎。

 

 本編中にいくつかのブレンドが出てくるのだけど、おそらくカーネルの2人目の奥さんのメモにある「リークレシピ」が最も近いと思う。このレシピと、動画の最後のレシピとを比較してみる:

 

リークレシピ   再現レシピ
タイム 小さじ 1/2   - -
バジル 小さじ 1/2   バジル 小さじ1
オレガノ 小さじ 1/3   オレガノ 小さじ1/2
セロリソルト 小さじ 1   - -
黒胡椒 小さじ 1   黒胡椒 小さじ3
ドライマスタード 小さじ 1   - -
パプリカ 小さじ 4   パプリカ

 

小さじ6
ガーリックソルト 小さじ 2  

にんにく

(粉末?)

 

小さじ3
おろし生姜 小さじ 1  

しょうが

(粉末?)

小さじ2
白胡椒 小さじ 3    白胡椒 小さじ9 
     

オニオン

(粉末?)

小さじ2
      ナツメグ 小さじ1
      セージ 小さじ1
      マジョラム 小さじ1

 

 

ここで鍵になるのはカーネルの自伝:

 

〜世界でもっとも有名なシェフ カーネル・サンダースの自伝〜

https://japan.kfc.co.jp/tale/pdf/note.pdf

 

 いわく

最初は塩、コショウとあと2種類ほどの調味料で味つけをしていましたが、試行錯誤の末、チキンの風味を活かす理想的な調味料のブレンドを考案したのです。その時点で10種類ほどの調味料を使用していたでしょうか。

(pp.112-114)

  この記述はリークレシピと符合する。その後500食の注文が入ったとき

(このフライドチキンを食べる人たちは、いつもの常連のお客様ではない。この人たちは“これまでのフライドチキンの味”がどんなものかを知らないはずだ。新しい調味料を試すいい機会だ)

 そして私は2種類ほど新しいものを、ほかの調味料と一緒に小麦粉に混ぜ込みました。でき上がったのは、それまでの人生で味わった中で最高においしいフライドチキンでした。

 以来、一度も調味料を変えることなく今日に至っているのです。

(p.115)

  ということは、リークレシピに2種類程度のスパイスを入れたと考えられる。

 

 リークレシピと再現レシピを対照すると、リークレシピになくて再現レシピにあるのはオニオン・ナツメグ・セージ・マジョラムの4つ。

 うちオニオンは、あまり意味がないように思う。風味としてはガーリックで十分だから。そすと残るはナツメグ・セージ・マジョラムとなる。

 たぶんナツメグは入ってると思う。問題はセージとマジョラム。セージは香りが強すぎるし、マジョラムは穏やか過ぎる。いや両方はいっていても数としては合うのだが、どちらか片方ではないだろうか。

 

 これ以上は深入りするまい。KFCとまったく同じ風味のチキンを作ったところで、それはまったく差別化要因にならないので。ただ総菜屋さん唐揚げ屋さんがフライドチキンを作ろうという場合には工夫のネタになるだろう。

 

 それより気になるのは揚げ油。KFC公式ウェブサイトでも再現レシピでもショートニングを使っている。カーネル自伝によれば

 

 母はラードを使っていましたが、妻は『クリスコ』というショートニングを使っていました。私は、当時人気のあったベジタブル・ショートニングを使うことにしました。

(p.109)

 ショートニングカーネルの工夫だろうが、伝統的なアメリカ南部料理ということであれば、綿実油を使うものだと思う。

 

 「母はラード」というのは…18世紀まで合衆国で食用油といえばラード・牛脂・バターの3種類しかなかった。その名残だろう。

 それが南部で綿花プランテーション産業が興って、副産物としてワタの種が残る。それで19世紀に入るとそのワタの種から採った綿実油が第4の油として使われるようになったという。

 

 フライドチキンは黒人のソウル・フードだという。どういうことかというと、白人が食べない手羽やら足先やらを油でじっくり揚げて骨まで食べられるようにしたということ。

 黒人奴隷がラード・牛脂・バターにありつけるはずはない。一方で綿実油は綿花栽培の副産物だから、黒人奴隷であってもタダ同然で入手できたはずだ。

 

 だから本来は綿実油で、ショートニングカーネルの工夫、南部料理として作るのであればキャノーラ油でも良いはずなのだ。