いにしえの大麻に関する記述

 なんか昔あったなぁと心にひっかかっていたのだけど、最近ようやく再ヒット。江戸時代にも大麻の芽に向精神作用があることが一部で知られていた。

 モノは江戸時代後期に成立した甲子夜話』。24巻9話に「麻芽の毒、狂を発する事」というエピソードがある。オリジナルに当たれず、公開されている『古事類苑』に収録されているものを読んでみた:

web.archive.org

 以下、現代語に抄訳:

 ある日の坐話で聞いたのだが、麻の初生の芽を食すれば発狂するという。先年、谷中妙伝寺というところに早朝ある人が行ったところ、その住職・小僧・下男など皆が気を失ったかのように熟睡している。また見ると、仏壇の本尊から器具・戸・障子の類、ことごとく打ち破られている。その人不審に思い、眠っている者を揺り起こしても目を覚まさない。しきりに起こしてようやく目を覚ました。そこでその人は何でこうなったのかを聞いたところ、さてさてよく寝たものだ、昨日の夜は面白かったと言うので、それはどういうことかと尋ねたところ、打ち破れたものを見て大いに驚き、始めて狂の結末を知ったという。あの毒は消えれば元に戻るということか。

(あまり関係なさそうな酒の話や難しい漢文が出てくるので中略)

またあの寺で数人発狂したとき、十二歳になる子が、両手に箸を持ち、面白いと言いながら狂い出し、その次に住職が狂ったと言う。年少の者の腹の中のためだろうか、和尚が多く食べたせいだろうか。

 『古事類苑』経由で貝原益軒大和本草』に行きついて、ケシを見てみたら、ケシのタネの食用としての利用の他には若い苗を食べるという記述しかなく、ケシからアヘンを採取する記述はなかった。江戸時代に現在のドラッグの概念はなかった模様。