主に、マイルドヤンキーのエサについて。
熊本のイナカに滞在中…田舎であるし、郷里である。
シャッター街で何やらイベントやってる。何かと思えばハロウィンで、小さな女の子たちがふわふわな衣装を着ている。
けっ。ここは日本だ。日本には地蔵盆というものがある。この地域ではすたれたけれども(昭和28年に実家の近辺でやってた写真が熊本日日新聞の写真集に残っている)、まだまだ熊本県下では健在だ。
そうした地蔵盆という伝統から疎外された人たちが、空き地におっ建った「ファミリー向け」マンションに住んで、シャッター街のハロウィンなんてイベントに女の子を着飾らせて、いい気になってる。けったくそ悪い。
ちょっとスシ食いたいと思った。座って食べられるスシ屋も回るスシ屋も実家からは遠い。だから、そこいらで買おうと思って、マックスバリュ九州の店舗に出かけた。手頃なスシがない…なんでいちいちサーモン入れる?鮭とサンマは遠い土地の魚だから、生のモノは地元の味覚ではない。
仕方ねぇなと売り場を離れて、ふと隣の棚を見たら、
台湾「風」ラーメンとは何だ台湾「風」とわ!!!
わたしゃ台湾に行ったとき台南で、担仔麺の元祖の店『渡小月』で担仔麺を食った。パクチーがダメな人は手を挙げてと言われて、わたしゃ大丈夫だったから手を挙げなかったのだけど、来た担仔麺を見たら、おろし生ニンニクが入ってた。熊本でニンニクには火を通す…ラーメンのマー油が代表格。生のニンニクは、馬刺しの薬味に使う「ことがある」という程度。だから私はパクチーOKだけど生ニンニクは大の苦手。別の皿に取ってよけた。何にせよ担仔麺にトウガラシを投入して辛くすることはない。
んで台湾にトウガラシの効いた辛い麺がないかといえば、あることはある。発音は知らんが紅焼牛肉麺。具は牛スジの煮込み。都市部に限られるので、ちょっと地方に行くと知らない人が多いようだ。
とにかく台湾で辛い麺といえば紅焼牛肉麺であり、こういうスタイルの辛い麺はない。
もちろん私は知っている。名古屋を中心とした東海圏に、いわゆる名古屋メシとして台湾ラーメンなるモノがあることを。これは担仔麺の辛口アレンジなのらしいが、とにかく名古屋ローカルの食べ物であり、もちろん台湾には存在しない。
なお私は台湾に行ったとき、ばっちり紅焼牛肉麺を食った。辛さは名古屋の台湾ラーメンの半分程度だった。
したがって上の画像は、名古屋メシの台湾ラーメンであろう。それならば
名古屋風台湾ラーメン
とするのが正しい。
この街がなかなかにグローバルで、中国人、フィリピン人、ベトナム人…最近はブラジル人も見かけるようになった。そうした人たちは見向きもするまい。四川方面の人はいないと思う。コリアン私は一世帯しか知らないけど、もう4世だ。タイの人も知らない。台湾人は、昔はいたけど、今はいないと思う。結局、こういう極端に辛いものを好みそうな外国人はいない。もし台湾人が来たとすれば、こんなもの台湾にはない!って怒るだろう…実際に名古屋でも台湾人が「名古屋メシの台湾ラーメン」を食べて、そのように怒るというから。
そうしたモロモロの事情も知らず、無批判に食う阿呆が多少はいるのだろう…
実際のところ九州人はそんなに辛い食べ物を好まない。博多・長浜ラーメンに辛子タカナをちょっと入れるぐらいなもので、担担麺を出す店は実に少ない。この街にも熊本市内が本店の担担麺屋が出店したけど、1年でツブれた。また、おそらく名古屋方面から流れてきたと思われる中国人が中華料理屋を開いて、店先に「台湾ラーメン」のノボリを出してたけど、これまた1年ほどでツブれた(これは中華料理の味付けが九州人の好みと根本的に異なったせいだろうと思うけど)。
ともあれ「台湾風」なるラーメンを九州のスーパーで売るという発想が理解できない。おそらく名古屋人もこれを見たら
殴ったろか!?
って怒ると思う。名古屋メシの台湾ラーメン、アレはアレで東海圏の立派な文化だから。
けったくそ悪くて、ゆめタウンに行った…大阪より東の人たちにはナジミがなかろうけれども、本拠が広島のスーパー・イズミが展開しているショッピング・センターで、特に九州には多い。そんでスシ類の売り場を見たら、
これは「ばら寿司」なのか?「ちらし寿司」なのか?
ゆめタウンはマックスバリュ九州よりもマシというレベルで良心的だと思う。この土地はもともと関西文化の影響が強いので、稲荷寿司は三角だ。それをマックスバリュ九州は三角も四角も両方とも売る。これは地域文化に対する強姦行為だ。ゆめタウンは助六以外は三角しか売らない。そうした意味で、マックスバリュ九州よりマシだ。
にしても、ばらちらし寿司とは何だ?ばら寿司とちらし寿司の違いを知らない?
キチンとしたばら寿司、キチンとしたちらし寿司を食ったことがない人が「商品」を企画して、消費者にプッシュするのだろう。脳足りんとしか表現できない。
イチイチがそんなで、どうにもこうにも腹立たしい。スリッパだけ買って帰った。
帰り道に牛丼屋の「すき家」の前を通りがかった。そしたら新商品!なんて言ってて、唖然。
牛丼にお好み焼きとタマゴ乗っけてお好み牛玉丼って…
いや、さあ…言っちゃあ悪いけど、そりゃ牛丼ってのは肉体労働者のエサだよ?でも、東京の魚市場は豊洲に移転したけど、その前の築地の、その前、日本橋に魚河岸があった頃からの伝統があるモノだ。
それをこんなメチャクチャなアレンジ加えて、どうする?
牛丼については、ちょっと説明が要るかも知れない。もちろん九州に牛丼なんてなかった。ただし、肉うどんはあった。九州の肉うどんは…牛丼屋「なか卯」の肉うどんが最も近い。ああいう肉うどんはあっても牛丼というものはなく、関西へんの「麺類丼一式」といった店にあるようなドンブリ物しかなかった。
むかし父が「いっぺん牛丼を食ってみたい」と言ってた。私は「あんなもんエサだぞ?」とたしなめたものだ。そこへ、すき家ができた。70代の父は、一度で懲りたようだ。
つまり牛丼というのは九州のイナカモンにとっては「都会の文化」のひとつのアイコンなのであって、あこがれでもあったのだ…実際のところは肉体労働者のエサに過ぎないのだけど。私だってカロリーや塩分やコレステロールを気にしなければならないお年頃であるから、めったには食べない。
関西のコナモンに白いメシという文化も非常に違和感を覚えるのだけど、それに牛丼を合わせるとは…
ていうか、ゼンショー・グループだよね?なか卯は同じゼンショー・グループだ。なか卯は大阪発祥で、牛丼屋なのにウドンと親子丼を出す。かつて衣笠丼や木の葉丼を出したこともあった。けれども、こんな奇天烈な品物を出したことはなかった。同じゼンショー・グループだってのに、すき家に対してモノ申せなかったのかね?
なるほど大阪には、こういうモノがあるにはある。けれども東京の富士そばが手を出して、ひっこめたシロモノだ。
すき家お好み牛玉丼も、こうしたシロモノだ…いや、ポテトそばよりタチが悪い。言ってみればウドン・ソバにポテトをざらざら投入して、その上からオリバーどろソースとマヨをぶっかけるみたいな話…
ていうか、牛肉いらないじゃん。丼メシの上に天カスざらざら乗っけて、上から醤油とウスターソースとマヨをダボがけすれば、同じような味になるし。食材コストは牛丼より圧倒的に低い。したがって粗利率も非常に高くできる。なのになぜに、こんな手間のかかる(お好み牛玉丼専用の冷凍お好み焼きを製造し、全国的な物流網に乗せるという、とてつもなく大きなコストがかかる)商品を???関西限定でも厳しいと思うのだが。
父は京都に住んでいたことがあるけれども、かつて父が牛丼にあこがれたように、イナカの人間は都会的文化を渇望している。私の実家へんは室町時代から開けた十分に文化的な地域なのだけど、新陳代謝が激しすぎて、古いものがあまり残っていない。地蔵盆も昭和28年の写真にしか残っていない。
室町時代から開けた地域ですら、じーさんが牛丼を渇望する。ましてや、そうした文化のない地域に住むマイルドヤンキーは、自らの文化をもたない、あるいは地域文化から疎外されている。
そして郊外型ショッピグセンター大好き。彼ら彼女らにしてみれば、ショッピングセンターこそが都会的文化の集積なのだ(わたしゃ「どこがだ」と思うけどね)。
そしてショッピングセンターの中の人たちも、そうした文化というものがわかっていない。
たとえば当地でお盆に迎え火・送り火という風習はない。お盆にはお団子を作るのである。けれどもショッピングセンターができた頃、麻幹(おがら)を売っていた。もちろん売れない。だから今は売らない。結局、売上があがってナンボであって、文化なんぞどうでも良いのだ。
そして、ちらし寿司とばら寿司の違いがわからないアンポンタンどもが、ちらし寿司ともばら寿司とも似て非なるシロモノを「商品開発」して、プッシュする。そしてそれはマイルドヤンキーのエサとして消費される。なに、売る側は売上があがってナンボ、買う側は腹がふくれてナンボ。ウィンウィンってやつだ。
しかし、そこに文化はない…文化を売るのはデパートであって、ショッピングセンターは売上ナンボだからなんだけど。
実に罪深いことである。