韓国のカレーとタンムジの関係

 韓国には何度も行った。学生時代に韓国人の先輩がいたという縁があって。

 私は単純な嫌韓嫌中ではない。中華人民共和国には行くつもりがない…なんしろ民主主義国家じゃないし矛盾だらけで、行ったら何が起きるかわかったもんじゃない。中国人にしたって、この人はという人物は一人しか会ったことがない:たいていは自分の考えを一方的にまくしたてるだけで、こっちの話をきちんと聞かない。でも台湾人は話せばわかるし、韓国だって話せばわかる人が中華人民共和国の人よりはるかに多いから。

 さて韓国の食べ物でいまいち良くわからないのが、カレー。

 日本の食べ物が植民地時代に導入されて、일식(イルシク:日式)として定着している。カレーもそうだし、トンカツは돈까스(トンカス)だし。チャンポンはトウガラシで真っ赤だ。ホットクなんてのがあるけど、たぶん日本からもたらされたホットケーキが韓国化されたものだと私は思う。

 そんで意外な食べ物が단무지(タンムジ)。タクアン漬けだけど、日本のスーパーで売ってる安い、着色料で真っ黄色で、やたら甘ったるいタイプのもの。昔はタックヮンと呼んでいたようだが、日本語そのまんまじゃマズいなんて話があって、タンムジと呼ぶようになったそうだ。トンカツがトンカスのままなのに…

 そしてなぜかタンムジには、上から酢をダボがけする。なんでだ?

 だいいち韓国でダイコンの漬物は、赤いカクテキ(깍두기:カットゥギ)と、トウガラシを入れない동치미(トンチミ)とがあるのであって…もっとも両者とも乳酸発酵で十分に酸っぱいし、これらに比べるとタンムジはほとんど酸味がないから、あえて酢をかけるのかも知れない。

 んでカレーの付け合せは、タンムジかキムチ。これがちょっと謎だった。

 そいや在日コリアンの話を聞くと、彼ら彼女らが日本国内の家庭でカレーを作って食べるという場合、まず100%、付け合せはキムチだ。これは民族的アイデンティティというものだろう。

 むかし、とある本を読んでたら、かつて日本郵船の国際航路でカレーの付け合せはおなじみ福神漬けだったけど、三等船客向けは福神漬けでなくタクアンだったと書かれていた。

 んで本日、ふと思いついてぐぐったら:

 

web.archive.org

  日本郵船のウェブサイトに、カレーはドライカレーで、付け合せは基本的に福神漬けだったけど高かったから、三等船客はタクアンだったと明確に書かれている。

 

 かつて朝鮮半島は日本の植民地であって、当時は日本国内扱いだったから、以下は表記を朝鮮・朝鮮人で統一する。差別的な意図はありません。あくまでも当時の状況の記述ですので。

 

 当時の日本~朝鮮の航路というのが、いまいち良くわからない。この時代の朝鮮は日本国内扱いで、いろんな海運業者がいろんな路線を運航していたし。

 ただ横浜・神戸~ソウルという場合は、日本郵船の長崎~インチョン便を使うのが一般的だったみたい。

 もう亡くなったけど、ナム・ジュン・パイク(白南準;백남준;Nam June Paik)というソウル出身のビデオ・アーティストがいた。この人の家はめちゃくちゃリッチで、戦後に一家で日本に移住、本人は東大に入ったけど、その時点で家にピアノがあったという。こういう人は船に乗るにしても一等・二等で、カレーを食べるにしたって福神漬けの付いたカレーだっただろう。

 けれどもこういう人は例外で、戦前戦中の朝鮮人が朝鮮と日本を往来する場合、普通は三等を使ったことだろう。そすとカレーの付け合せは必ずタクアンになる。

 そういう人たちがカレーというのを覚えて、戦後に韓国国内でカレーを作るってな場合、付け合せはタクアンに決まってるということになるだろう。

 ま、憶測の域を出ないけどね。